編著者の略歴−神奈川県鎌倉市出身。上智大学外国語学部ロシア学科卒業。アウトドア関連書籍編集者を経て、フリージャーナリストに転身。働く人のメンタルヘルスや婚活、世代格差の問題など、今どきの大人シングルが抱える悩みを中心に取材を続ける。「日経プラスワン」「All Aboutガイド」「ダイヤモンド・オンライン」「毎日が発見」など多数のメディアで連載・執筆を手がけてきた一方、講演活動も。シェアハウスの楽しさに触発され、現在、全国のシェアライフを探訪中。 核家族が標準世帯の座を降りて、すでに数年が過ぎている。 大家族が分裂して核家族になったように、核家族は再度の分裂をへて単家族となることは明らかである。 単家族とは1人生活者を意味するのではない。 単家族であるがゆえに、何人かの同居が可能になるのである。
今日では、老世代と若い世代の核家族が同居しても、大家族とは言わずに2世帯同居という。 大家族のままだったら、2世帯同居という概念はあり得なかった。 大家族が核家族に分裂したから、2世帯同居と見なすことができるのだ。 核家族も同様である。 核家族が単家族に分裂するから、核家族を単家族の2世帯同居と見ることができるのである。 単家族は2世帯同居だけではなく、さまざまな人間の繋がりを可能にする。 単家族であるがゆえに、人間関係の取り結び方は、一対の男女に捕らわれることはない。 もちろん一対の男女という組み合わせもあるだろうが、男性同士でも良いし、女性同士でも良い。 そのうえ、3人以上の成人が同居しても、一向に構わないのだ。 単家族化する社会では、住むことにおいて人間関係の取り結び方が大きく拡大する。 かつては学生時代に寮などで、他人との同居を体験した。 しかし、寮生活は男女別が多かった。 男女間に愛情関係が絡んでくると、男女2人だけで同居するようになり、他の人間を拒否するようになる。 その理由は、何と言ってもセックスにある。 つまり、男女の間に肉体関係が生じると、他の人間が立ち入ることを拒むようになるのだ。 本書は時代背景の原因には論究しないが、時代の流れにのった住まいのあり方として、シェアハウスを提案している。 こうした本の性格として、シェアハウスの良いところだけを取り上げており、こんなに簡単に上手くいく例ばかりではないと思う。 しかし、新たな住まい方の模索は、いま始まったばかりだから、話の美味しい側面にだけ目が行くのは仕方ないだろう。 家族の単位が個人へとばらけた結果、一軒の家を何人かで共同して借りることを、シェアハウスという。 それに対して、1部屋を何人かで借りることを、ルームシェアと言うようだ。 どちらにせよ、性的な関係のない赤の他人と暮らすことは同じだから、今までの住まい方とは違う。目次を書いておこう。 序章 10のキーワードで見るシェア生活が人気の理由 シェアライフに出会わなければ、今の自分はなかった 1 仲間につつまれる 2 絵になるリビング 3 愉快な平日 4 お財布に優しいカバンひとつのお引越し 5 もう家事はひとりで頑張らなくていい 6 素顔が磨かれるシンプルライフ 7 憧れのあの街で暮らそう 8 いくつになってもどんな人も! 9 ブータンに学ぶ幸せ 10 何が起きても心強い暮らし縁を作ろう
こんな暮らし方があったのか! 1 好きなライフスタイルを選ぽう 2 ハッピーでエコで自由。所有からシェアの時代 3 カジュアルな生活を楽しむ喜びと仲間 4 シェア生活と男と女 第2章 選び方、ここがポイント 誰と、どこに住む? 1 シェア住居かルームシェアか 2 物件選びのチェックポイント 3 生活動線と間取りの関係 4 誰と住む? ここに注目 5 新しい生活に向けて身も心もシンプルに! 6 ほどよい距離感を保つコツ 第3章 シェア生活成功事例 理想のライフスタイルを手に入れた人たち 1 もう一度、あんな生活をしてみたい 2 みんなバラバラ、まちまち。だから飽きない! 3 ルームシェア大家さんになって手に入れたもの 4 自分らしい生活、人生を取り戻す 5 魅力的な場を作れば、人とつながる 6 時代や感覚にフィットする生き方を探求する 第4章 個性的でバラエティ豊かな物件の数々 あなたにぴったりのシェアハウスはどれ? 1 今風にアレンジした古民家で自然と暮らす 2 音楽スタジオ・ヨガスタジオ・英会話教室付き! 3 スウェーデンで生まれたコレクティブハウス 4 漫画家・起業家の卵よ、集まれ 5 甘え下手やひとりで頑張る女子も和む場所 第5章 まだ決断できない人のプレ・シェア生活 「とりあえず週末シェア」のススメ 1 別荘をシェアしてみませんか 2 パリで始まった隣人祭り 3 自宅でワクワク体験 4 住み開きの極意 第6章 シェアを上手にするための豆知識 これだけは知っておこう 1 ルームシェア編 2 シェア住居・ゲストハウス編 3 住み開き編 終わりに シェアで紡ぐ絆。シェアで拓く未来。 シェアハウスを多く手がける不動産屋としては、「ひつじ不動産」が有名だが、他にもシェアハウスを手がける不動産屋もあらわれてきた。 新しい流れは若い人から始まることが多いから、今のところシェアハウスの動きも若い人が中心である。 しかし、今後、シェアハウスが増えることはあっても、減ることはないだろう。 (2012.7.29)
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