匠雅音の家族についてのブックレビュー   大人のためのシェアハウス案内|西川敦子

大人のためのシェアハウス案内 お奨度:

筆者 西川敦子(にしかわ あつこ)  ダイヤモンド社 2012年 ¥1500−

編著者の略歴−神奈川県鎌倉市出身。上智大学外国語学部ロシア学科卒業。アウトドア関連書籍編集者を経て、フリージャーナリストに転身。働く人のメンタルヘルスや婚活、世代格差の問題など、今どきの大人シングルが抱える悩みを中心に取材を続ける。「日経プラスワン」「All Aboutガイド」「ダイヤモンド・オンライン」「毎日が発見」など多数のメディアで連載・執筆を手がけてきた一方、講演活動も。シェアハウスの楽しさに触発され、現在、全国のシェアライフを探訪中。
 核家族が標準世帯の座を降りて、すでに数年が過ぎている。
大家族が分裂して核家族になったように、核家族は再度の分裂をへて単家族となることは明らかである。
単家族とは1人生活者を意味するのではない。
単家族であるがゆえに、何人かの同居が可能になるのである。
TAKUMIアマゾンで購入


 今日では、老世代と若い世代の核家族が同居しても、大家族とは言わずに2世帯同居という。
大家族のままだったら、2世帯同居という概念はあり得なかった。
大家族が核家族に分裂したから、2世帯同居と見なすことができるのだ。
核家族も同様である。
核家族が単家族に分裂するから、核家族を単家族の2世帯同居と見ることができるのである。

 単家族は2世帯同居だけではなく、さまざまな人間の繋がりを可能にする。
単家族であるがゆえに、人間関係の取り結び方は、一対の男女に捕らわれることはない。
もちろん一対の男女という組み合わせもあるだろうが、男性同士でも良いし、女性同士でも良い。
そのうえ、3人以上の成人が同居しても、一向に構わないのだ。
単家族化する社会では、住むことにおいて人間関係の取り結び方が大きく拡大する。

 かつては学生時代に寮などで、他人との同居を体験した。
しかし、寮生活は男女別が多かった。
男女間に愛情関係が絡んでくると、男女2人だけで同居するようになり、他の人間を拒否するようになる。
その理由は、何と言ってもセックスにある。
つまり、男女の間に肉体関係が生じると、他の人間が立ち入ることを拒むようになるのだ。

 本書は時代背景の原因には論究しないが、時代の流れにのった住まいのあり方として、シェアハウスを提案している。
こうした本の性格として、シェアハウスの良いところだけを取り上げており、こんなに簡単に上手くいく例ばかりではないと思う。
しかし、新たな住まい方の模索は、いま始まったばかりだから、話の美味しい側面にだけ目が行くのは仕方ないだろう。

 家族の単位が個人へとばらけた結果、一軒の家を何人かで共同して借りることを、シェアハウスという。
それに対して、1部屋を何人かで借りることを、ルームシェアと言うようだ。
どちらにせよ、性的な関係のない赤の他人と暮らすことは同じだから、今までの住まい方とは違う。目次を書いておこう。

序章
10のキーワードで見るシェア生活が人気の理由       
 シェアライフに出会わなければ、今の自分はなかった
  1 仲間につつまれる
  2 絵になるリビング
  3 愉快な平日
  4 お財布に優しいカバンひとつのお引越し
  5 もう家事はひとりで頑張らなくていい
  6 素顔が磨かれるシンプルライフ
  7 憧れのあの街で暮らそう
  8 いくつになってもどんな人も!
  9 ブータンに学ぶ幸せ
 10 何が起きても心強い暮らし縁を作ろう


広告
第1章 今どきのシェア事情
  こんな暮らし方があったのか!
  1 好きなライフスタイルを選ぽう 
  2 ハッピーでエコで自由。所有からシェアの時代 
  3 カジュアルな生活を楽しむ喜びと仲間 
  4 シェア生活と男と女  

第2章 選び方、ここがポイント
  誰と、どこに住む?
  1 シェア住居かルームシェアか
  2 物件選びのチェックポイント
  3 生活動線と間取りの関係
  4 誰と住む? ここに注目
  5 新しい生活に向けて身も心もシンプルに!
  6 ほどよい距離感を保つコツ  

第3章 シェア生活成功事例
  理想のライフスタイルを手に入れた人たち
  1 もう一度、あんな生活をしてみたい
  2 みんなバラバラ、まちまち。だから飽きない!
  3 ルームシェア大家さんになって手に入れたもの
  4 自分らしい生活、人生を取り戻す
  5 魅力的な場を作れば、人とつながる
  6 時代や感覚にフィットする生き方を探求する


第4章  個性的でバラエティ豊かな物件の数々
  あなたにぴったりのシェアハウスはどれ?
  1 今風にアレンジした古民家で自然と暮らす
  2 音楽スタジオ・ヨガスタジオ・英会話教室付き!
  3 スウェーデンで生まれたコレクティブハウス
  4 漫画家・起業家の卵よ、集まれ
  5 甘え下手やひとりで頑張る女子も和む場所

第5章  まだ決断できない人のプレ・シェア生活
  「とりあえず週末シェア」のススメ
  1 別荘をシェアしてみませんか
  2 パリで始まった隣人祭り
  3 自宅でワクワク体験
  4 住み開きの極意

第6章  シェアを上手にするための豆知識
  これだけは知っておこう
  1 ルームシェア編
  2 シェア住居・ゲストハウス編 
  3 住み開き編

終わりに  シェアで紡ぐ絆。シェアで拓く未来。


 シェアハウスを多く手がける不動産屋としては、「ひつじ不動産」が有名だが、他にもシェアハウスを手がける不動産屋もあらわれてきた。
新しい流れは若い人から始まることが多いから、今のところシェアハウスの動きも若い人が中心である。
しかし、今後、シェアハウスが増えることはあっても、減ることはないだろう。
(2012.7.29)
広告
 感想・ご意見・反論など、掲示板にどうぞ
参考:
J・S・ミル「女性の解放」 岩波文庫、1957
伊藤友宣「家庭という歪んだ宇宙」ちくま文庫、1998
永山翔子「家庭という名の収容所」PHP研究所、2000
匠雅音「家考」学文社
G・エスピン=アンデルセン「ポスト工業経済の社会的 基礎」桜井書店、2000
湯沢雍彦「明治の結婚 明治の離婚」角川選書、2005
越智道雄「孤立化する家族」時 事通信社、1998
岡田秀子「反結婚論」亜紀書房、 1972
大河原宏二「家族のように暮らした い」太田出版、2002
J・F・グブリアム、J・A・ホルスタイン「家族とは何か」新曜 社、1997
磯野誠一、磯野富士子「家族制度:淳風美俗を中心として」岩波新書、1958
エドワード・ショーター「近代家族の形成」昭和堂、1987
S・クーンツ「家族に何が起 きているか」筑摩書房、2003
賀茂美則「家族革命前夜」集英社、2003
信田さよ子「脱常識の家族づくり」 中公新書、2001
黒沢隆「個室群住居: 崩壊する近代家族と建築的課題」住まいの図書館出版局、1997
ジョージ・P・マードック「社会構造 核家族の社会人類学」 新泉社、2001
石坂晴海「掟やぶりの結婚道」講談 社文庫、2002
マーサ・A・ファインマン「家族、積みすぎた方舟」 学陽書房、2003
上野千鶴子「家父長制と資本制」岩波書店、1990
斎藤学「家族の闇をさぐる」小学 館、2001
斉藤学「「家族」はこわい」新潮 文庫、1997
島村八重子、寺田和代「家族と住まない家」春秋社、 2004
伊藤淑子「家族の幻影」大 正大学出版会、2004
山田昌弘「家族のリストラクチュアリング」新曜社、1999
斉藤環「家族の痕跡」 筑摩書房、2006
ヘレン・E・フィッシャー「結婚の起源」どうぶつ社、1983
瀬川清子「婚姻覚書」 講談社、2006
香山リカ「結婚がこわい」 講談社、2005
原田純「ねじれた家 帰りたくない家」 講談社、2003
A・柏木利美「日本とアメリカ愛をめぐる逆さの常識」中公文庫、1998
サビーヌ・メルシオール=ボネ「不倫の歴史」原書房、 2001
棚沢直子&草野いづみ「フランスには、なぜ恋愛スキャン ダルがないのか」角川ソフィア文庫、1999
下田治美「ぼくんち熱血母主家 庭」講談社文庫、1993
加藤秀一「<恋愛結婚>は何をもたらしたか」 ちくま新書、2004
バターソン林屋晶子「レポート国際結婚」 光文社文庫、2001
中村久瑠美「離婚バイブル」文春文庫、2005
佐藤文明「戸籍がつくる差別」 現代書館、1984
松原惇子「ひとり家族」文春文庫、 1993
森永卓郎「<非婚> のすすめ」講談社現代新 書、1997
林秀彦「非婚の すすめ」日本実業出版、 1997
伊田広行「シングル単位の社会論」世界思想社、 1998
斎藤学「「夫婦」という幻想」祥伝社新書、2009
マイケル・アンダーソン「家族の構造・ 機能・感情」海鳴社、1988
宮迫千鶴「サボテン家族論」河出書房新社、 1989
匠雅音「核家族か ら単家族へ」丸善、1997
藤森克彦「単身急増社会の衝撃」日経新聞社、2010

米山秀隆「空き家急増の真実日経新聞社、2012
西川敦子「シェアハウス案内」ダイヤモンド社、2012

「匠雅音の家族について本を読む」のトップにもどる