匠雅音の家族についてのブックレビュー    金持ち父さん貧乏父さん|ロバート・キヨサキ、シヤロン・レクター

金持ち父さん貧乏父さん
  アメリカの金持ちが教えてくれる哲学
お奨度:

著者:ロバート・キヨサキ、シヤロン・レクター 筑摩書房、2000年   ¥1600−

著者の略歴: ロバート・キヨサキ−1947年ハワイに生まれる。日系四世。投資家・著述寮・教師、億万長者になる方法を教えるロバートは、「金持ち養成学校の先生」と呼ばれている。「人々が経済的に苦しんでいる理由は、何年も学校に通いながら、お金について何も学んでいないことにある。学校で、人はお金のために働くことを学ぶ…。だが、お金を自分のために働かせることは知らないままで一生を終わる」
 シヤロン・レクター−公認会計士・三児の母・経営コンサルタント、フロリダ州立大学卒、「私は子洪たちを愛していて子洪たちができるかぎりいい教育を受けられるようにしたいと思っています。これまでの学校教育も大切ですが、それはもはや充分なものではありません。今は、だれもがお全のこととお金がどう働くのかを理解しておく必要があります」

 通常なら本書は、私の本棚には入ることない種類の本だったが、すすめられて読んだ。
いろいろと考えさせてくれて、とても有意義だったと、今では推薦者に感謝している。
情報社会は工業社会と根底的に違うと言いながら、私は自分が働いて金を稼ぐことに関しては、今までの考えから抜け出すことができなかった。
本書はそれを打ち破ってくれた。
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 小学校や中学の頃、ボクは学業成績が優秀なほうだった。
大学にもいったし、大学院にもいった。
少なくとも、そこでは他の仲間程度には勉強したし、卒業後もきちんと働いてきた。
しかし、決して裕福ではない。
むしろ貧乏かもしれない。
小学校の頃、私より勉強ができない人はたくさんいた。
その彼等は私より貧乏かというと、必ずしもそうではない。

 小さかった頃、親からも教師からも「勉強せよ、そして良い学校へ進学せよ。それが将来の幸福を保証する」と聞かされてきた。
それは真実だったのだろうか。
その結果、みな幸せになったのだろうか。
本書でも同じことが言われている。

 「息子よ、おまえには一生懸命勉強して、いい成績をとって、大会社で安定した仕事を 見つけられるようにしてほしい。給料以外に福利厚生の充実した会社を選ぶのも忘れな いようにな」p57

 しかし、これは貧乏父さんの台詞である。
私たちは一生懸命に勉強し、一生懸命に働けば、幸せがやってくると聞かされてきた。
幸せは、経済的な豊かさだけが保証するものではないが、経済的な豊かさも幸せを支える重要な要素である。

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 優秀だったボクの友人たちは、一流大学に入って一流企業に就職し、懸命に働いてきた。
そして出世もしている。
しかし、彼等を見ていると、あんなに優秀だったのに、あの程度の収入なのかと思う。
一生働いて、住宅ローンで家を買って、そのローンが終わる頃には定年退職である。
年金生活が待っていればいいが、それだって潤沢なものではない。
しかも、リストラにあってしまえば、その時点で収入は激減する。
優秀な成績も安定した企業も、彼等の生活の保障にはならない。

 そうした事実を知っている金持ち父さんは、次のように言う。

 立派な教育を受けた何百万という人が、職業上はいちおうの成功は収めているのに経済的には苦労しているという事態は、ほとんどの人が金銭・財政的技能を身につけることなく学校を卒業して仕事についていることから生じている。いくら一生懸命働いても彼らの生活は楽にならない。彼らの受けた教育に不足しているのは「どうやってお金を琢ぐか」ではなく「お金をどう使うか」、つまり「お金を稼いだあとどうするか」だ。P101

 私たちは一生懸命に働けば、お金はあとからついてくると、何となく信じ込まされてきた。
お金を云々するのは、下品なことのように教育されてきた。
勤勉さこそ尊いものだというのは、工業社会を作った思想の典型である。
時間を働くという勤勉さが人間を作るというのは、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」そのものである。

 しかし、情報社会化する今、工業社会の教育は破産している。
肉体を使った長時間労働だけが尊いわけではない。
頭脳を使っての労働こそ新たなものを生んでいるのだから、労働の成果も頭脳を使うことによって得るべきである。

1.会計カ…お金に関する読み書き能力
2.投資カ…お金がお金を作り出す科学を理解し、戦略を立てるカ
3.市場の理解カ…需要と供給の関係を理解し、チャンスをつかむカ
4.法律カ…会計や会社に閑する法律、国や自治体の法律に精通していることp167

 金持ち父さんは、以上の四つが不可欠だという。
お金のために働くのではなく、お金が自分のために働いてくれることこそ、大切なのだという。

 本書が主張することは、アメリカでもわが国でもそれほどの違いはない。
単にお金の問題だけでなく、情報社会では労働の形態が変わるのである。
それはまさに肉体労働から頭脳労働へである。
本書は今後の生活を再検討するよう、私に教えてくれた。 
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参考:
下田治美「ぼくんち熱血母主家庭 痛快子育て記」講談社文庫、1993
奥地圭子「学校と社会・子どもとカリキュラム」講談社学術文庫、1998  
広岡知彦「静かなたたかい:広岡知彦と憩いの家の30年」朝日新聞社、1997
クレイグ・B・スタンフォード「狩りをするサル」青土社、2001
天野郁夫「学歴の社会史」平凡社、2005
浜田寿美男「子どものリアリティ 学校のバーチャリティ」岩波書店、2005
佐藤秀夫「ノートや鉛筆が学校を変えた」平凡社、1988
ボール・ウイリス「ハマータウンの野郎ども」ちくま学芸文庫、1996
寺脇研「21世紀の学校はこうなる」新潮文庫、2001
桜井哲夫「近代の意味:制度としての学校・工場」日本放送協会、1984
ユルク・イエッゲ「学校は工場ではない」みすず書房、1991
江藤淳「成熟と喪失:母の崩壊」河出書房、1967
桜井哲夫「近代の意味:制度としての学校・工場」日本放送協会、1984
G・エスピン=アンデルセン「福祉国家の可能性」桜井書店、2001
G・エスピン=アンデルセン「ポスト工業経済の社会的基礎」桜井書店、2000
ソースティン・ヴェブレン「有閑階級の理論」筑摩学芸文庫、1998
オルテガ「大衆の反逆」白水社、1975
E・フロム「自由からの逃走」創元新社、1951
アラン・ブルーム「アメリカン・マインドの終焉」みすず書房、1988
イマニュエル・ウォーラーステイン「新しい学」藤原書店、2001
田川建三「イエスという男」三一書房、1980

フィリップ・アリエス「子供の誕生」みすず書房、1980
J・F・グブリアム、J・A・ホルスタイン「家族とは何か その言説と現実」新曜社、1997
磯野誠一、磯野富士子「家族制度:淳風美俗を中心として」岩波新書、1958

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