匠雅音の家族についてのブックレビュー     産んではいけない|楠木ぽとす

産んではいけない! お奨度:

著者:楠木ぽとす(くすのき ぽとす)  新潮文庫、2005年    ¥476−

 著者の略歴−1961(昭和36)年、大分県生れ。大学卒業後、有機農業の研修生等を経て、現在塾講師。一児の母。
 2005年の1月に上梓されてから、2006年の5月で、5刷になっている。
子産みに関して、やっとまともな本が、読まれるようになった。
当初、2001年に太田出版から上梓されたときには、ほとんど売れなかったというから、いくらか時代も変わったのだろう。
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 筆者は子供を産んではいけない理由を、山のように書き並べる。
しかし、筆者は子供が大嫌いかというと、そんなことはない。
子供の<ねえねえ>攻撃には、たちまちにして白旗を揚げている。
そして、子供の指令に喜んで(?)従ってしまうのだ。
そんな筆者でも、現在の子育て状況は、最悪だというのだ。
まったくもって、そのとおりだろう。

 だいたい少子化なんて、子供を産む人には、まったく無関係の話だ。
にもかかわらず、子供が減るから産めという。
ここには産まれてくる子供の幸せや、育てる親たちへの視線はない。
労働力がなくなる。
年金が破綻する。
そんなことは、個人とは関係ない。
それで困るのは、国と企業だけだ。
個人はいよいよとなったら、どこかの国へと移住してしまえばいい。
 目の付く小見出しを、目次から拾ってみても、納得できることばかりだ。

  もっと眠りたい!    18
  自分は子供が嫌いだ    26
  母親同士の付き合いがイヤ    30
  子供がいなけりゃ、離婚していなかったかも…  48
  夫に対する怨念    51
  そばにいるんならオムツくらい替えてくれ   58
  残業は、「しない」のではなく、「できない」のだ  66
  世間の目が冷たい    74
  子供は夜寝ない    96


などなど、中身を読んでいけば、頷けることばかり。
ほんとうに産まないことのほうが、大正解だろう。
皮肉でも何でもなくそう思う。

 しかし、筆者はたった一つだけ、誤解していることがある。
それは誰にも子供を産め、と強制されたわけでもないことだ。
もともと子供は不要なのだ。
不要なものを、たまたま、ひょんなことから、ただ間違って妊娠してしまって、これまた何となく、行きがかり上、産んでしまった。
筆者も言っているように、産む前には、子育ては簡単だと錯覚していた。

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 現在のような核家族では、子育てはきわめて困難である。
自分の人生に責任をもとうとしたら、子供など産んではいけない。
それは筆者のように、1人の子供を産む体験などしなくてもわかる。
理屈を考えても、当然のことだ。
子供を産めば儲かるから、社会は手を変え品を変え、騙しに走っているにすぎない。

 筆者には、残酷なように聞こえるかも知れないが、筆者にかぎらず、子育てが困難である理由は、自分の生きるスタイルを持っていないからだ。
他人が何といおうとも、我関せずで自分の道を進めばいい。
人並みの育て方だとか、子供の人生に責任をもつとか、といった雑念を振り払えば良かった。

 厚底ブーツに、金(茶)髪、派手なアイシャドーに、ミニスカートでベビーカーを押しながら諷爽と風きって歩いてるヤンママ。
 すれちがいざまに、「それでも母親か」なんて、人相の悪いおじさんから捨て台詞を聞かされることになっても負けないで!
 厚化粧のおばさんの、「いまどきの母親は」なんて決まり文句にもめげないで!
 「この子の面倒、ちゃんと見てるの?」なんてのも要らないお節介。そんなこと、ちゃらちゃら遊び歩いてる高校生から言われる筋合いないって。
 凡人から見れば、目立たない恰好してた方が楽だろうにって感じだけど、敢えて妥協しない生き方には、勇気や気骨のようなものを感じます。
 歩きにくい 「いばらの道」をわざわざ選んで歩いてるヤンママ達。余計なお世話だろうけど、世間の無理解に負けないで、頑張って!P89


って言っている。
そのとおりだ。
変な例えだが、オウム信者の親たちは、小さくなって暮らしているだろうが、オウム信者は正面を向いてい生きている。
ボクも機動隊を相手に、石を投げているときには、正々堂々としていた。

 本書は、太田出版に投稿したところ、編集者の土田さんから、上梓を承諾されたという。
それが2000年のことだと言うから、土田さんの時代感覚は、少し早すぎたのだ。
この頃、太田出版は真っ当な本を出そうと、勢いがあった。
多くの編集者が、原稿を読まないなかで、幸運な出会いがあった。
これはちょっと脱線。

 先進国の男女は、小さな子供を背負って、どこへでも行く。
やっと歩くくらいの年齢の子供を背負ったフランス人の夫婦と、ボクはサハラ砂漠の真ん中で出会った。
子供は親を選べない。
親の都合でしか、子供は育ててもらえない。
どんな時代になっても、それは真実だ。
今の日本では、子供を産んではいけない。    (2007.04.21)
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参考:
ニール・ポストマン「子どもはもういない」新樹社、2001年、
大河原宏二「家族のように暮らしたい」太田出版、2002年
J・F・グブリアム、J・A・ホルスタイン「家族とは何か」新曜社、1997
J・S・ミル「女性の解放」岩波文庫、1957
佐々木陽子「総力戦と女性兵士」青弓社、2001
山崎朋子「サンダカン八番娼館」筑摩書房、1972
ニール・ポストマン「子どもはもういない」新樹社、2001
大河原宏二「家族のように暮らしたい」太田出版、2002年
G・エスピン=アンデルセン「福祉国家の可能性」桜井書店、2001
G・エスピン=アンデルセン「ポスト工業経済の社会的基礎」桜井書店、2000
J・F・グブリアム、J・A・ホルスタイン「家族とは何か」新曜社、1997
磯野誠一、磯野富士子「家族制度:淳風美俗を中心として」岩波新書、1958
エドワード・ショーター「近代家族の形成」昭和堂、1987
黒沢隆「個室群住居」住まいの図書館出版局、1997
S・クーンツ「家族に何が起きているか」筑摩書房、2003
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
賀茂美則「家族革命前夜」集英社、2003
ピーター・リーライト「子どもを喰う世界」晶文社、1995
まついなつき「愛はめんどくさい」メディアワークス、2001

奥地圭子「学校は必要か:子供の育つ場を求めて」日本放送協会、1992
信田さよ子「脱常識の家族づくり」中公新書、2001
ジュディス・リッチ・ハリス「子育ての大誤解」早川書房、2000
フィリップ・アリエス「子供の誕生」みすず書房、1980
増田小夜「芸者」平凡社 1957
岩下尚史「芸者論」文春文庫、2006
スアド「生きながら火に焼かれて」(株)ソニー・マガジンズ、2004
田中美津「いのちの女たちへ」現代書館、2001
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
梅棹忠夫「女と文明」中央公論社、1988
ラファエラ・アンダーソン「愛ってめんどくさい」ソニー・マガジンズ、2002
まついなつき「愛はめんどくさい」メディアワークス、2001
J・S・ミル「女性の解放」岩波文庫、1957
ベティ・フリーダン「新しい女性の創造」大和書房、1965
クロンハウゼン夫妻「完全なる女性」河出書房、1966
松下竜一「風成(かざなし)の女たち」現代思想社、1984
モリー・マーティン「素敵なヘルメット職域を広げたアメリカ女性たち」現代書館、1992
小野清美「アンネナプキンの社会史」宝島文庫、2000(宝島社、1992)
熊沢誠「女性労働と企業社会」岩波新書、2000
ジェーン・バートレット「「産まない」時代の女たち」とびら社、2004
楠木ぽとす「産んではいけない!」新潮文庫、2005
山下悦子「女を幸せにしない「男女共同参画社会」 洋泉社、2006
小関智弘「おんなたちの町工場」ちくま文庫、2001
エイレン・モーガン「女の由来」どうぶつ社、1997
シンシア・S・スミス「女は結婚すべきではない」中公文庫、2000
シェア・ハイト「女はなぜ出世できないか」東洋経済新報社、2001
中村うさぎ「女という病」新潮社、2005
内田 樹「女は何を欲望するか?」角川ONEテーマ21新書 2008
三砂ちづる「オニババ化する女たち」光文社、2004
大塚英志「「彼女たち」の連合赤軍」角川文庫、2001
鹿野政直「現代日本女性史」有斐閣、2004
片野真佐子「皇后の近代」講談社、2003
ジャネット・エンジェル「コールガール」筑摩書房、2006
ダナ・ハラウエイ「サイボーグ・フェミニズム」水声社 2001
山崎朋子「サンダカン八番娼館」筑摩書房、1972
水田珠枝「女性解放思想史」筑摩書房、1979
フラン・P・ホスケン「女子割礼」明石書店、1993
細井和喜蔵「女工哀史」岩波文庫、1980
サラ・ブラッファー・フルディ「女性は進化しなかったか」思索社、1982
赤松良子「新版 女性の権利」岩波書店、2005
マリリン・ウォーリング「新フェミニスト経済学」東洋経済新報社、1994
ジョーン・W・スコット「ジェンダーと歴史学」平凡社、1992
清水ちなみ&OL委員会編「史上最低 元カレ コンテスト」幻冬舎文庫、2002
モリー・マーティン「素敵なヘルメット」現代書館、1992
R・J・スミス、E・R・ウイスウェル「須恵村の女たち」お茶の水書房、1987
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
鹿嶋敬「男女摩擦」岩波書店、2000
荻野美穂「中絶論争とアメリカ社会」岩波書店、2001
山口みずか「独身女性の性交哲学」二見書房、2007
田嶋雅巳「炭坑美人」築地書館、2000
ヘンリク・イプセン「人形の家」角川文庫、1952
スーザン・ファルーディー「バックラッシュ」新潮社、1994
井上章一「美人論」朝日文芸文庫、1995
ウルフ・ナオミ「美の陰謀」TBSブリタニカ、1994
杉本鉞子「武士の娘」ちくま文庫、1994
ジョンソン桜井もよ「ミリタリー・ワイフの生活」中公新書ラクレ、2009
佐藤昭子「私の田中角栄日記」新潮社、1994
斉藤美奈子「モダンガール論」文春文庫、2003
光畑由佳「働くママが日本を救う!」マイコミ新書、2009

エリオット・レイトン「親を殺した子供たち」草思社、1997
奥地圭子「学校は必要か:子供の育つ場を求めて」日本放送協会、1992
伊藤雅子「子どもからの自立 おとなの女が学ぶということ」未来社、1975
ジェシ・グリーン「男だけの育児」飛鳥新社、2001
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
熊沢誠「女性労働と企業社会」岩波新書、2000
ミレイユ・ラジェ「出産の社会史 まだ病院がなかったころ」勁草書房、1994
竹内久美子「浮気で産みたい女たち」文春文庫、2001
石原里紗「ふざけるな専業主婦 バカにバカといってなぜ悪い」新潮文庫、2001


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